所信

代表幹事  兼川 真紀

代表幹事  兼川 真紀

親和全期会の年度末総会において、平成22年度の代表幹事にご選出いただきました。私は、ここに所信を述べ、平成22年度は中村博明副代表幹事、堂野達之事務局長をはじめとする執行部とともに、力を尽くすつもりですので、よろしくお願いいたします。

1 親和全期会とその存在意義

親和全期会は言うまでもなく、登録15年目までの法曹親和会の会員からなる組織です。規約によれば全期会は、「弁護士法1条に定める弁護士の氏名を実現するため、法律の理論と実務についての研究を通じ、弁護士会及び法曹親和会に若手弁護士の意見を具申すること並びに会員相互の親睦を図ること」を目的としています。

法理論と実務の研究や親睦はともかく、若手弁護士の意見を、弁護士会の運営に反映するという意味では、全期会の意味はかつてなく高まっているともいえます。法曹大増員時代を迎えて、すでに15年目以下の会員の数は、全弁護士数の過半数を軽く超えています。

記憶に新しい今回の日弁連会長選挙の争点も、東京・大阪対地方、若手問題であったといえます。現に宇都宮新会長は司法修習中の給与の貸与制の廃止と給費制の復活を重要課題に掲げ、新規登録弁護士の就職難などの現象から司法試験合格者を1500名に減らすと述べています。

就職難の緩和や給費制の復活は、実現すればいずれも法曹になる人、なったばかりの人、ひいては業務が拡大しないと悩むひとにとっては歓迎すべきことかもしれません。しかし、一方で、おそらく世の中には、まだまだ弁護士を必要とすると思われる人がたくさんおり、その人たちに対するリーガルサービスは不十分とされています。その視点から、今回の選挙結果は厳しい非難にさらされてもいます。

つまり多数意見のむき出しの要望がある一方で、弁護士という職業が要求する社会との調和も必要であり、その中で私たちもいろいろなことを考えていかなければならないということです。

2 若手弁護士の気持ちを言語化したい

また、実際のところ、若手の弁護士の意見といってもその集約は簡単ではありません。

法曹人口問題はどうか、日々の業務拡大についてはどうか、OJTはどうか。

法曹人口をもっと減らしてほしいという人がいる一方、自分たちが合格してきたことを考えれば、人口を減らせというべきではないと考えている人もいます。もっと増やせという人はあまりいないようですが。仕事が増えればいいと思うけど、どうしてよいかわからないという人もたくさんいるでしょう。私もある意味ではそのひとりです。研修所教育が不十分なうえに、満足のいく就職ができず、実際に仕事をしながら弁護士のあり方を覚えるというOJTがうまくいっていないと不安を持つ人もたくさんいると思います。それぞれが現状に対する批判となっています。

しかし、批判や不満は多々あっても、みんなが弁護士という職業を選び、選んだからには立派な、立派なという言葉がこれもどういうものを指すのかは難しいところですが、ともかく立派な弁護士になりたいと思っています。

このように、若手の弁護士たちは自分たちの考えを持ち、感想を持ち、毎日一生懸命働いているわけです。彼らや彼女たちの気持ちをひとつにまとめるというようなことは実際のところ私にはできそうにありません。というのも、たとえばこの15年だけでも、2年修習を受けた者、1年半の者、1年の者、ロースクールを出ている者、いない者と、弁護士になるときに持っていたバックグラウンドは細分化し、それによって考え方に多少なりとも違いが出てきているのではないかと思うからです。

しかし、その中で、おそらくすくなくとも一つ、すべての弁護士が抱いている気持ちがあると私は思います。それは、よき法曹になりたいという気持ちです。私はその気持ちをベースに、会員の感想や気持ちや希望を言語化して、自分たちでできることは実現し、弁護士会で考えた方がいいと思うことはそのようなルートに乗せるということに努力してみたいと思います。

たとえば、近い将来の自分たちに関わることについて、弁護士会が考えていることを知り、そこでしかるべき意見を言えるようにしたい。具体的には現在東弁が募集している将来構想について、何らかの意見を述べたいと思います。

また、たとえばOJTや新規登録弁護士のチューター制度、弁護士会のIT構想については、全期世代の会員がコミットできるよう、親和会とも協同することを検討したいと考えています。

3 自分たちでできることをやってみよう

それから、もう一つ、考えていることは、どうしてもらいたいのかではなくどうしていくかを自分たちで考えてみようということです。おわかりのとおり、これはケネディの選挙演説の引用ですが、自分たちの問題にできる範囲で自分たちで取り組んでみようということです。

若い世代は、できが悪いとよく言われます(これには異論のある人もたくさんいると思いますが、質の問題がクローズアップされているのは事実なので、その限りで許してもらいたいと思います)。さらには就職先がないと言われ、先行きが不安だと言われ、言われたい放題です。

でもできが悪いと言われるのであれば、勉強してできが悪いと言われないようにしましょう。全期では継続的な研修を実施してきましたし、これからも実施する予定です。かつて大きな成果をあげたと言われる訴訟技術研究会の復活も計画しています。こういう勉強がしたいということがあれば言ってください。実現に努力します。

就職先が足りないというのにはちょっと対応しにくいですが、仕事がなくて先行きが不安なのであれば、仕事を見つけにいってみましょう。

全期会ではこれまでも、自前の法律相談、事業承継や下請法などの研究と書籍の出版など、業務推進のための諸活動を続けてきています。これらは継続して、事業承継や下請法などの研究が仕事につながっていくような方策を検討したいと思います。また、なんといっても仕事の入り口は法律相談ですから、多くの会員がたくさんの法律相談を担当できるよう工夫したいと思います。具体的には、東京23区の地区法曹が実施している法律相談の法律相談員となる方策を探りたいと思います。そこからひいては、区の相談が、市民にとっても利用しやすいサービスとなり、弁護士にとっても有益な活動となっていけばよいと考えています。

4 みなさんとともに使い甲斐のある全期を

これまで述べてきたとおり、私としては次期の執行部では、若手会員の気持ちの言語化と逆風吹き荒れる弁護士業界をしぶとく生き残るにはどうしていくかという考えに基づく実践、を二つの柱としていきたいと思っています。他の会派の若手との協同という課題もあるかもしれませんが、それはそのときどきに対処していきたいと思います。

もっとも、よい仕事をするためには、息抜きとよい仲間が必要です。しぶとく生き残ることばかり考えていると心が荒むからです。会員のみなさんには、時々は、全期の行事や旅行やゴルフに参加していただき、よい友人を作っていただきたいと思っています。

以上をもって私の所信とさせていただきます。来年度一年間、一生懸命取り組むつもりでおります。一緒に使い甲斐のある全期を作っていきましょう。よろしくお願いいたします。

以上